KLCオンライン検定 学習ページ
脳活トレーナー認定試験 学習ページ
このページでは、認知症やMCIの基礎知識、認知症予防・リスク低減の考え方、脳の健康を支える食事・運動・認知活動・社会参加、脳活の取り入れ方、認知症の本人や家族との関わり方、地域の相談先について学びます。自分自身の脳の健康づくりや、家族・身近な人との関わり、仕事や地域活動など、日常生活のさまざまな場面で役立てられる基礎知識を身につけることを目的としています。
「脳活トレーナー」は、認知症を診断したり治療したりする医療資格ではありません。また、脳活教室を開いたり、人へ指導したりするために必要な資格でもありません。本認定試験は、脳活・認知症・MCI・本人や家族との関わり方について一定の基礎知識を学び、理解していることを確認するKLCオンライン検定の民間認定試験です。
この学習ページと試験問題について
脳活トレーナー認定試験は、この学習ページに記載している内容を基準に出題します。専門的な診断基準、薬剤名、細かな医学用語を暗記する試験ではありません。「認知症やMCIをどのように理解するか」「脳の健康を支える生活にはどのようなものがあるか」「脳活を無理なく安全に取り入れるには何に注意するか」「認知症の本人や家族とどのように関わるか」「どのような場合に専門機関へ相談するか」といった、日常生活で役立つ判断を重視します。
認知症や認知機能に関する情報には、「これをすれば認知症にならない」「この食品を食べれば予防できる」「この脳トレで認知症が治る」など、効果を誇張した情報もあります。本試験では、特定の方法を万能視せず、現在確認されている知見の範囲を理解し、自分や身近な人の生活全体を考えることを大切にします。
認知症・MCI・新しい認知症観を正しく理解する
認知症予防を「絶対に防ぐこと」と誤解しない
食事・運動・認知活動・交流などを生活に取り入れる
本人の意思を尊重し、必要な相談先を知っておく
はじめに ― この認定で大切にする考え方
「脳活トレーナー」は職業名ではありません
本認定試験は、講師や医療・介護の専門職だけを対象としたものではありません。自分自身の脳の健康に関心がある方、家族や身近な人のために認知症やMCIを学びたい方、仕事や地域活動で高齢者と接する方など、どなたでも受験できます。
認定の目的は、脳活、認知症、MCI、認知症予防・リスク低減、本人や家族との関わり方について一定の基礎知識を学び、理解していることを確認することです。本試験に合格したからといって、人へ脳活を指導することや、認知症を判定することができる資格になるわけではありません。
脳活は「できる・できない」を判定する試験ではありません
計算、言葉、記憶、注意、手先を使う活動などを行うと、得意不得意やその日の体調によって結果に差が出ます。しかし、一般的な脳活課題の結果は医療的な認知機能検査の結果ではありません。一つの課題ができなかったことや、点数が低かったことだけで、「認知症の可能性が高い」「脳年齢は○歳」と判断することはできません。
脳活の目的は、難しい問題を解けるようになることだけではありません。考える、思い出す、体を動かす、人と会話する、新しいことを経験するなど、さまざまな刺激を無理なく生活に取り入れることが大切です。
認知症の本人の尊厳と意思を大切にする
認知症やMCIがあっても、本人には好きなこと、嫌いなこと、やりたいこと、続けたい生活があります。「認知症だから周囲が決める」「高齢だから本人には分からない」と考えるのではなく、本人の希望を聞き、できることを活かしながら必要な支援を考えます。
この認定で身につけたい基本姿勢
- 脳活課題の結果だけで認知症やMCIを判断しない
- 「絶対に予防できる」「必ず改善する」と考えない
- 自分や相手に合った脳活を無理なく取り入れる
- 認知症の本人のできないことだけでなく、できることや希望にも目を向ける
- 家族だけで問題を抱え込まない
- 医療や介護の専門的な判断が必要な場合は、適切な相談先につなぐ
この学習ページで学ぶ8つの分野
1. 新しい認知症観と認知症の基本
認知症基本法と新しい認知症観、認知症の意味、認知機能、加齢によるもの忘れとの違い、主な原因疾患や症状について学びます。
2. MCI・早期相談・医療との役割分担
MCIの意味、認知症との違い、状態や経過が一人ひとり異なること、早めに相談する意味、自分だけで診断せず適切な相談先につなぐ考え方を学びます。
3. 認知症予防・リスク低減の基本
「予防」という言葉の正しい意味と、認知症リスクを一つの方法だけで考えず、身体・生活習慣・認知活動・社会参加などを組み合わせて考える基本を学びます。
4. 脳の健康を支える食事・運動・社会参加
魚、野菜、果物、豆類などを含む多様な食事、身体活動、認知的な活動、人との交流など、脳の健康を支える生活について具体的に学びます。
5. 脳活・認知トレーニングの取り入れ方
計算、言葉、記憶、読書、会話、音楽、ゲーム、運動、新しい学習など、さまざまな脳活を自分や身近な人の生活に無理なく安全に取り入れる考え方を学びます。
6. 本人中心のコミュニケーションと意思の尊重
同じ質問を繰り返す場合などの関わり方、本人の感情や背景を考える視点、できることを活かす支援、本人の意思を確認する方法について学びます。
7. 家族・周囲の支援と生活上の変化への対応
家族の負担、認知症に伴う行動・心理面の変化、周囲ができる支援、急な変化を認知症の進行だけと決めつけないことなどについて学びます。
8. 地域資源・相談先・社会参加
地域包括支援センター、認知症疾患医療センター、認知症カフェ、認知症ケアパス、若年性認知症支援など、本人と家族を地域で支える仕組みを学びます。
1. 新しい認知症観と認知症の基本
「新しい認知症観」とは
2024年1月に「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が施行され、同年12月には認知症施策推進基本計画が閣議決定されました。現在の認知症施策では、認知症の人を「何もできなくなる人」「支えられるだけの人」と見るのではなく、認知症になってからも一人ひとりにできることややりたいことがあり、本人の意思が尊重され、住み慣れた地域で希望を持って自分らしく暮らすことができるという「新しい認知症観」が重視されています。
これは、認知症による困難を軽く考えるという意味ではありません。認知機能の低下によって生活上の支援が必要になることはあります。その場合でも、本人の意見を聞かず周囲だけで決めるのではなく、「本人はどうしたいのか」「どこまで自分でできるのか」「どのような支援があれば続けられるのか」を一緒に考えます。
認知症とは一つの病名ではなく「状態」を表す言葉
認知症とは、さまざまな原因によって認知機能が障害され、日常生活に支障が出ている状態を指します。認知症そのものが一つの病名なのではなく、その背景にはアルツハイマー病、脳血管障害、レビー小体病など、さまざまな原因があります。
認知機能は記憶だけではありません
認知症というと「もの忘れ」がよく知られていますが、認知機能には記憶以外にも、注意を向ける、物事を順序立てて行う、言葉を理解して使う、場所や物を認識する、状況を判断する、人との関係に応じて行動するなど、さまざまな働きがあります。そのため、認知症では記憶の問題が目立たない場合もあります。
加齢によるもの忘れと認知症を単純に二分しない
年齢を重ねると、名前がすぐに出てこない、物を置いた場所を忘れるなど、年齢に伴う変化が起こることがあります。一方、認知症では、最近の出来事そのものを思い出せない、金銭管理や服薬管理など生活上の支障が出ることがあります。
ただし、「朝食の内容を忘れたら正常、朝食を食べたことを忘れたら認知症」のような一つの例だけで診断することはできません。もの忘れがあっても認知症ではないことがあり、反対に、もの忘れが目立たなくても別の認知機能の障害によって認知症と診断されることがあります。
主な原因疾患
アルツハイマー型認知症
認知症の原因として多い疾患です。新しい出来事を覚えにくくなるなど記憶の変化が目立つことがありますが、症状の出方や進み方には個人差があります。
血管性認知症
脳梗塞や脳出血など脳血管の障害と関係して生じます。障害された脳の場所や程度によって症状が異なり、注意や実行機能、歩行などに影響が出る場合もあります。
レビー小体型認知症
認知機能の状態が変動する、実際にはないものが見える幻視、動作が遅くなる・体がこわばるなどのパーキンソン症状が見られることがあります。すべての人に同じ症状が現れるわけではありません。
前頭側頭型認知症
行動や性格の変化、社会的な場面での行動の変化、言葉の障害などが目立つ場合があります。初期からもの忘れだけが目立つとは限りません。
認知症のように見えても別の原因がある場合があります
正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、甲状腺機能の異常、ビタミン不足、薬剤の影響など、認知症に似た症状が出る原因の中には、適切な診断や治療によって改善が期待できるものもあります。体調不良、睡眠不足、感染症、脱水などでも一時的に認知機能が低下することがあります。そのため、「年齢のせい」「認知症だから仕方がない」と自己判断しないことが重要です。
認知症になっても能力がすべて失われるわけではありません
認知症があっても、長く続けてきた作業、好きな音楽、趣味、人との交流など、できることや楽しめることは人それぞれ残っています。周囲の人は、できない部分だけを見るのではなく、本人が持っている力や関心にも目を向けることが大切です。
脳活の場面で考えてみましょう
自分や身近な人が漢字問題を思い出せず困っているとき、その一場面だけを見て「認知症が進んでいる」と判断してはいけません。ヒントを使う、選択肢から考える、別の得意な活動へ切り替えるなど、無理なく続けられる方法を考えます。
復習問題 1
Q1. 「新しい認知症観」の考え方として正しいものはどれですか。
- 認知症になった人は危険を避けるため、本人の希望より周囲の判断を常に優先する
- 認知症になってもできることややりたいことがあり、本人の意思を尊重して自分らしい生活を考える
- 認知症による生活上の困難は考えず、すべて以前と同じ生活を続ける
- 認知症の本人より家族の希望だけを基準に支援を決める
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正解:2 新しい認知症観では、認知症になってからも本人にはできること・やりたいことがあり、意思が尊重され、自分らしく暮らせることを重視します。必要な支援や安全への配慮を行わないという意味ではありません。
復習問題 2
Q2. 認知症について正しいものはどれですか。
- 認知症は一つの病気の名前である
- 認知症では必ず最初にもの忘れが現れる
- さまざまな原因で認知機能が障害され、日常生活に支障が出ている状態を指す
- もの忘れがあれば必ず認知症である
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正解:3 認知症は状態を表す言葉であり、背景にはさまざまな原因疾患があります。記憶以外の認知機能が先に目立つ場合もあります。
復習問題 3
Q3. 身近な人が一つの記憶課題をうまくできませんでした。考え方として正しいものはどれですか。
- その結果だけで認知症の可能性が高いと伝える
- 点数が低いことを理由に、本人へ認知症の危険性が高いと伝える
- 課題の成績だけでは診断できないため、必要に応じて方法や難易度を調整する
- できるまで同じ課題を続けさせる
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正解:3 一般的な脳活課題は医療的な認知機能検査ではありません。一つの結果だけで認知症を判断せず、無理なく続けられる方法を考えます。
2. MCI・早期相談・医療との役割分担
MCIとは
MCIは Mild Cognitive Impairment の略で、日本語では軽度認知障害と呼ばれます。認知機能に以前より低下が見られるものの、日常生活の自立が大きく損なわれるほどではない状態で、認知症とは区別されます。認知症そのものではありませんが、健常な状態とも異なります。
MCIになったら必ず認知症になるわけではありません
MCIの経過は一人ひとり異なります。認知症へ移行する人もいれば、状態を維持する人、認知機能が正常範囲へ戻る人もいます。そのため、「MCIなら将来必ず認知症になる」「この活動をすれば必ず元に戻る」と断定してはいけません。
早めに相談する意味
早めに相談する目的は、認知症という診断を急いで付けることではありません。認知機能の変化の原因を確認し、治療できる原因がないか調べ、本人の生活上の困りごとに早く対応し、必要な支援や今後の生活について本人の希望を反映しやすくするためです。
どのような変化が相談のきっかけになるか
以前と比べて、約束を忘れることが増えた、金銭や薬の管理が難しくなった、慣れた作業に時間がかかるようになった、同じ商品を何度も買うようになった、慣れた場所で迷うようになったなど、生活上の変化が続く場合は相談を考えるきっかけになります。ただし、これらの一つが見られただけで認知症やMCIと決めつけることはできません。
急な変化は「認知症が進んだ」と決めつけない
短い期間に急に会話がかみ合わなくなった、急にぼんやりした、歩き方や体調が急に変わったなどの場合は、認知症のゆっくりした変化とは別に、感染症、脱水、薬の影響など身体的な問題が関係している可能性があります。脳活で様子を見るだけにせず、家族や医療機関などへ早めに相談することが大切です。
気になる変化があるときにできること・避けたいこと
してよいこと
- 本人が困っていることや変化について落ち着いて話を聞く
- 「心配なら一度相談してみませんか」と相談先を案内する
- 本人の不安をあおらず、生活の工夫を一緒に考える
- 本人が希望する場合に、家族や支援者へ相談するよう勧める
してはいけないこと
- 脳活課題の結果だけで認知症・MCIを判断する
- 「あなたは認知症です」と医学的判断を伝える
- 受診を拒む本人を脅したり、恥ずかしがらせたりする
- 医学的根拠なく特定の食品・サプリ・脳トレを治療として勧める
相談先
最初の相談先として、かかりつけ医、もの忘れ外来、地域包括支援センター、市区町村の相談窓口などがあります。より専門的な診断や相談が必要な場合には、認知症疾患医療センターなどにつながることがあります。地域によって利用できる窓口や名称が異なるため、自分だけで判断せず、地域の相談先を確認しておくことが大切です。
復習問題 1
Q1. MCIについて正しいものはどれですか。
- MCIと診断された人は全員認知症になる
- MCIは認知症とまったく同じ状態である
- 認知機能の低下はあるが、日常生活の自立が大きく損なわれるほどではない状態である
- 脳活課題の点数だけでMCIと判断できる
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正解:3 MCIは認知症そのものではなく、経過も一人ひとり異なります。
復習問題 2
Q2. 早めに相談する意味として誤っているものはどれですか。
- 認知機能の変化の原因を確認する機会になる
- 生活上の困りごとへの対応を早く始めやすくなる
- 本人の希望を今後の生活に反映しやすくなる
- 一度相談すれば認知症への進行を必ず防げる
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正解:4 早期相談には多くの意味がありますが、認知症への進行を必ず防げるという保証ではありません。
復習問題 3
Q3. いつも参加している人が、今日は急に会話がかみ合わず、普段と明らかに様子が違います。対応として適切なのはどれですか。
- 認知症が急に進んだと考え、難しい脳トレを行う
- 一時的なものなので必ず放置する
- 急な変化には体調不良など別の原因もあり得るため、必要に応じて家族や医療機関への相談につなぐ
- 本人に認知症だと伝える
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正解:3 急な変化を認知症だけの問題と決めつけず、身体的な原因も考えて適切な相談につなげます。
3. 認知症予防・リスク低減の基本
この学習ページでいう「認知症予防」
「認知症予防」という言葉は、「認知症に絶対ならないようにする」という意味ではありません。本学習ページでは、認知症になる時期を遅らせることや、認知症になってからも進行をできるだけ緩やかにすることを含む考え方として扱います。そのため、「この方法なら認知症を100%防げる」という説明はしません。
一つの方法ではなく生活全体を考える
認知機能の低下や認知症には、年齢や遺伝的な要因だけでなく、身体活動、喫煙、飲酒、食生活、高血圧・糖尿病などの健康状態、聞こえ、社会的なつながりなど、多くの要因が関係します。すべての要因を自分で変えられるわけではありませんが、健康づくりや生活環境の改善によってリスクを下げられる可能性があります。
身体活動・運動
身体活動や運動は、認知機能だけでなく、筋力、心血管の健康、骨の健康、気分など幅広い健康に関係します。ウォーキング、体操、筋力トレーニング、バランス運動、家事、買い物など、本人の体力や健康状態に合わせて体を動かすことが大切です。
運動は、全員が同じ時間・同じ強度で行わなければならないものではありません。年齢、体力、持病、転倒リスクなどに応じて無理のない内容にします。運動量や治療上の制限について判断が必要な場合は、医師や運動・リハビリテーション等の専門職へ確認します。
高血圧・糖尿病などの健康管理
高血圧、糖尿病、高コレステロールなど心血管・代謝に関わる状態を適切に管理することは、認知症リスクを考えるうえでも重要です。薬の量や治療方法を自己判断で変更せず、必要な健診や通院を続けることが大切です。
食事
認知症予防のために特定の一つの食品だけを食べればよいという根拠はありません。栄養の偏りを避け、本人の年齢、体格、疾患、食欲などに合わせて、全体として健康的な食生活を考えます。高齢者では、肥満だけでなく低栄養や体重減少にも注意が必要です。
サプリメントを「認知症予防薬」のように扱わない
ビタミンやオメガ3脂肪酸、マルチビタミンなどのサプリメントを、栄養不足が確認されていない人へ認知症予防目的で一律に勧めることは適切ではありません。栄養不足や病気の治療のために医師・管理栄養士などが必要と判断する場合とは分けて考えます。
喫煙と飲酒
喫煙をやめることや、飲酒量を減らすことは、認知症リスクだけでなく全身の健康を守るうえでも重要です。「少量の酒なら認知症予防になる」といった理由で飲酒を勧めることはしません。
聞こえへの対応
聞こえにくさがあると、会話へ参加しづらくなり、脳活の課題を理解しにくくなることもあります。大きな声で一方的に話すのではなく、周囲の雑音を減らす、正面からゆっくり話す、文字や図も使うなどの工夫をします。聞こえの低下が続く場合には耳鼻咽喉科などへの相談を勧め、必要に応じて補聴器等を含む対応を専門職と検討します。
認知的な活動と社会参加
読書、学習、会話、ゲームなど頭を使う活動や、人と交流し社会活動へ参加することは、認知機能や脳の健康を支える生活の一部として考えられます。2026年に更新されたWHOのガイドラインでも、認知トレーニング・認知刺激や社会活動への参加は、認知機能が正常な人やMCIの人のリスク低減策として挙げられています。
ただし、本人が嫌がる活動を「予防のため」と強制すると、活動そのものが負担になります。脳活は、本人の興味や生活に合う方法を選ぶことが大切です。
睡眠と生活リズム
睡眠不足は、その日の注意力、記憶、気分などに影響します。脳活で集中できない人をすぐに認知機能低下と考えず、睡眠不足や疲れ、体調なども確認します。強いいびき、睡眠中の呼吸停止が疑われる、日中の強い眠気が続くなどの場合は、医療機関への相談を勧めます。
予防を本人の責任にしない
健康的な生活をしていても認知症になる人はいます。認知症になった人に対して「運動しなかったから」「脳トレをしなかったから」と責める考え方は適切ではありません。リスク低減の知識は、本人を非難するためではなく、より健康に生活する選択肢を増やすために使います。
復習問題 1
Q1. この学習ページでいう「認知症予防」の説明として正しいものはどれですか。
- 認知症を100%防ぐ方法を身につけること
- 認知症になる時期を遅らせたり、認知症になってからも進行を緩やかにしたりすることを含む
- 脳トレだけを毎日行うこと
- 認知症の人を活動から外すこと
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正解:2 予防は「絶対にならない」という意味ではありません。
復習問題 2
Q2. 認知症リスク低減について誤っているものはどれですか。
- 身体活動や健康状態の管理など、複数の要因を考える
- 社会的な交流や認知的活動も生活の一部として考える
- 特定のサプリを飲めば認知症を確実に予防できる
- 本人の体力や病気に応じて無理のない活動を考える
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正解:3 特定のサプリメントだけで認知症を確実に予防できるとはいえません。
復習問題 3
Q3. 身近な人が聞こえにくそうな場合の対応として適切なのはどれですか。
- 聞こえなくても同じ速さ・同じ説明方法を続ける
- 本人が理解できないのは認知症だからだと考える
- 雑音を減らし、正面から話し、必要に応じて文字や図も使う
- 全員の前で聴力が悪いことを指摘する
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正解:3 聞こえの環境を整えることは、参加しやすい脳活を行うためにも重要です。
4. 脳の健康を支える食事・運動・社会参加
「これだけ食べればよい」「この運動だけでよい」ではありません
認知症のリスク低減では、特定の食品や一つの運動だけを特効薬のように考えません。身体活動、食事、生活習慣病の管理、認知的な活動、人との交流、聞こえへの対応など、複数の要素を生活の中で組み合わせることが大切です。自分や周囲の人に対しても、「これを食べれば認知症にならない」「この運動で認知症が治る」といった断定はしないことが大切です。
「認知症予防に効く食べ物」と断定するのではなく、「認知症になる危険性を低くすることと関連が報告されている食生活」「脳や全身の健康を支える生活習慣」として伝えます。
食事 ― 一つの食品より、全体のバランスと多様性
国立長寿医療研究センターでは、定期的な運動習慣、バランスのよい食事、社会活動への参加や人との交流などを組み合わせることが、認知症になる危険性を低くすることと関係すると説明しています。食事では、一つの食品だけを大量に食べるのではなく、さまざまな食品から必要な栄養を取ることを基本にします。
魚・青魚
イワシ、サバ、サンマなどの魚にはDHAやEPAなどの脂肪酸が含まれます。国立長寿医療研究センターの研究では、血中DHA濃度と将来の認知機能低下との関連が報告されています。ただし、魚を食べれば認知症を防げると保証するものではありません。
野菜・果物
健康的な食事の一部として、野菜や果物を取り入れます。一つの野菜や果物だけに偏らず、食事全体のバランスを考えます。
豆類・ナッツ・全粒穀物
豆類、ナッツ、全粒穀物なども、WHOが示す健康的な食事パターンに含まれる食品です。普段の食事の中で無理なく取り入れます。
いろいろな食品を食べる
国立長寿医療研究センターでは、食品摂取の多様性と認知機能・認知症リスクとの関連も研究されています。高齢期は「食べ過ぎ」だけでなく、食欲低下や低栄養にも注意します。
「DHAのサプリを飲めばよい」と考えない
魚に含まれるDHAなどと認知機能との関連が研究されていても、それをそのまま「DHAサプリを飲めば認知症予防になる」と置き換えることはできません。WHOの2026年ガイドラインでは、栄養欠乏が診断されていない人に、認知機能低下・認知症のリスク低減を目的としてビタミンB・E、オメガ3脂肪酸、マルチビタミン・ミネラルのサプリメントを勧めていません。
運動 ― 特別な運動でなくても「体を動かす」ことから始める
身体活動は認知症のリスク低減に関係する重要な要素です。ウォーキングや自転車などの運動だけでなく、掃除、買い物、庭仕事など日常生活の中で体を動かすことも身体活動に含まれます。大切なのは、本人の体力や健康状態に合わせて無理なく継続することです。
ウォーキング・散歩
特別な道具がなく始めやすい活動です。景色を見る、季節を感じる、目的地まで歩くなど、認知的・社会的な刺激と組み合わせることもできます。
筋力を保つ運動
椅子からの立ち座りなど、本人の状態に合った筋力づくりは、歩行や日常生活を続けるためにも役立ちます。痛みや持病がある場合は無理に行いません。
掃除・買い物・家事
日常生活の中で動くことも身体活動です。「運動教室へ行けないから何もできない」と考えず、普段の生活で動く機会を増やすことも考えます。
体と頭を一緒に使う活動
椅子で足踏みしながらしりとりをする、手拍子をしながら言葉を考えるなど、運動と認知課題を組み合わせる方法もあります。安全に行えることを最優先にします。
認知的な活動 ― 「脳トレ問題」だけが脳活ではありません
WHOの2026年ガイドラインでは、認知機能が正常な人やMCIの人について、認知トレーニングや認知刺激もリスク低減策として扱われています。計算や漢字問題だけでなく、読書、文章を書く、新しいことを学ぶ、ゲーム、音楽、会話、料理の手順を考える、写真を整理するなど、生活の中にはさまざまな認知活動があります。
社会参加・人との交流も大切な脳活
人と話す、趣味の集まりへ参加する、地域活動やボランティアを行うなど、人とのつながりを持つことも脳の健康を支える生活の一部です。趣味の集まりや地域活動など、人と会って話し、笑い、新しいことを経験する場を持つことにも意味があります。
日常生活に取り入れやすい脳活の例
「良い活動」は人によって違います
認知症予防に関係する研究がある活動でも、本人が強く嫌がるものを無理に続ける必要はありません。運動が好きな人、会話が好きな人、静かに読書したい人など、一人ひとりに合う方法を考えます。
復習問題 1
Q1. 認知症リスク低減を目的とした食事の説明として適切なのはどれですか。
- 青魚だけを毎日食べれば認知症を防げる
- 特定の食品だけに頼らず、魚、野菜、果物、豆類などを含む多様でバランスのよい食事を考える
- DHAサプリを飲めば魚を食べる必要はない
- 高齢者は体重に関係なく食事量を減らす
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正解:2 特定食品だけで認知症を予防できるとはいえません。食事全体のバランスと多様性を考えます。
復習問題 2
Q2. 脳の健康を支える身体活動について正しいものはどれですか。
- 激しい運動でなければ意味がない
- ウォーキングだけが認知症予防に関係する運動である
- 散歩や運動だけでなく、掃除や買い物など日常の身体活動も含めて考えられる
- 持病や転倒リスクがあっても全員同じ運動を行う
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正解:3 日常生活で体を動かすことも身体活動です。本人の状態に合わせて安全に継続します。
復習問題 3
Q3. DHAについての説明として適切なのはどれですか。
- DHAを摂れば認知症にならないと説明する
- 魚に含まれるDHAと認知機能低下との関連を示した研究はあるが、認知症予防を保証するものではないと説明する
- DHAサプリは認知症治療薬として使えると説明する
- DHA以外の食事は脳の健康に関係しないと説明する
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正解:2 研究で関連が示されていることと、特定の食品や成分で認知症を防げることは同じではありません。
5. 脳活・認知トレーニングの取り入れ方
「脳活」は計算やパズルだけではありません
この認定試験では、考える、思い出す、言葉を使う、手先を動かす、体を動かす、人と会話する、新しいことを学ぶなど、認知的・身体的・社会的な活動を幅広く「脳活」として捉えます。計算問題が好きな人もいれば、音楽、写真、会話、ゲーム、工作、パソコン、散歩などの方が続けやすい人もいます。
脳活を取り入れるときの5つの視点
1. 興味
自分や相手が好きなこと、経験してきたこと、やってみたいことを選びます。「認知症予防に良いと言われているから」という理由だけで、嫌いな活動を無理に続ける必要はありません。
2. 難易度
簡単すぎて退屈になったり、難しすぎて「自分はできない」と感じたりしない程度に調整します。ヒントを使う、問題数を減らす、時間を長くする、別の活動へ変えることもできます。
3. 継続しやすさ
特別な教材がなければできない活動より、散歩、料理、買い物、読書、会話、ゲームなど、生活の中で無理なく続けられるものを組み合わせることも有効です。
4. 安全
運動を伴う場合は、体調、持病、転倒しやすさなどに注意します。立って行うことが不安な場合は、椅子に座って行う、認知課題だけにするなど、安全を優先して変更します。
5. 楽しさ
脳活は点数や順位を競うためだけのものではありません。間違えても責めず、できたことや活動そのものを楽しめることを大切にします。
脳活の結果を医学的な評価として扱わない
市販の脳トレ、ゲーム、教室や家庭で行う問題などの点数は、医学的な認知機能検査とは異なります。前回より点数が低かったからといって、「認知症が進んだ」と判断することはできません。睡眠不足、疲労、気分、聞こえや見え方などでも結果は変わります。
間違えることも活動の一部です
認知課題では、思い出せなかったり間違えたりすることがあります。少し考える時間を取る、ヒントを使う、別の方法で考えるなど、無理なく続けます。答えが出るまで長時間続けたり、間違いを恥ずかしがらせたりする必要はありません。
認知トレーニング・認知刺激
計算、言葉、記憶、パズル、読書、文章を書く、新しいことを学ぶなど、頭を使う活動は脳の健康を支える方法の一つです。ただし、特定の課題だけを繰り返せば、すべての認知機能が向上したり認知症を防げたりするわけではありません。身体活動や社会参加など、生活全体と組み合わせて考えます。
音楽・ゲーム・趣味も脳活になります
歌う、楽器を使う、将棋・囲碁・トランプなどのゲーム、手芸、園芸、写真、料理、文章作成、スマートフォンやパソコンの新しい操作を覚えることなども、考える、手を使う、人とやり取りする、思い出すといった活動につながります。
運動と頭を同時に使う活動
椅子に座って足踏みをしながらしりとりをする、手拍子をしながら言葉を考えるなど、体を動かしながら認知課題を行う方法もあります。動きながら考えることに集中しすぎて転倒しないよう、安全にできる方法を選びます。
コグニサイズについて
コグニサイズは、国立長寿医療研究センターが開発した、運動と認知課題を組み合わせた認知症予防を目的とする取り組みの名称です。運動と同時に計算やしりとりなどの認知課題を行います。KLCオンライン検定の「脳活トレーナー認定試験」は、国立長寿医療研究センターが行うコグニサイズの研修とは別の民間認定です。本試験に合格したことで、国立長寿医療研究センターの研修修了者や認定者になるわけではありません。
運動を含む脳活は安全を優先する
運動を始めるときは、体調や持病に合わせて無理のない内容にします。めまい、強い痛み、強い息苦しさ、気分不良などがあれば中止し、必要に応じて医療機関へ相談します。転倒が心配な場合には、座ってできる活動へ変更することもできます。
日常生活での例
足元に不安がある人が「足踏みをしながらしりとり」に挑戦する場合、立ったまま行う必要はありません。椅子に座って足を動かす、手拍子としりとりに変える、言葉の課題だけにするなど、安全に続けられる方法へ変更できます。
復習問題 1
Q1. 脳活の取り入れ方として適切なのはどれですか。
- 認知症予防のためなら、苦手な課題でもできるまで続ける
- 難しい問題ほど脳に良いので、簡単な活動は避ける
- 興味、体調、難易度、安全性などに合わせて無理なく続ける
- 点数が低ければ認知症の可能性が高いと判断する
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正解:3 脳活は、本人に合った方法を無理なく安全に続けることが大切です。課題の点数だけで認知症を判断することはできません。
復習問題 2
Q2. コグニサイズについて正しいものはどれですか。
- 計算だけを行う認知トレーニングである
- 運動と認知課題を組み合わせた取り組みである
- KLCオンライン検定に合格すれば国立長寿医療研究センターの研修修了者になる
- 課題を一度も間違えないことが目的である
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正解:2 コグニサイズは運動と認知課題を組み合わせた取り組みです。KLCオンライン検定とは別の制度です。
復習問題 3
Q3. 運動を取り入れた脳活をしているときに、めまいを感じました。適切なのはどれですか。
- 認知症予防のため最後まで続ける
- 集中力不足と考えて難易度を上げる
- 活動を中止して安全を確保し、体調を確認する
- 休まず同じ内容を繰り返す
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正解:3 身体活動では安全が最優先です。体調不良があれば中止し、必要に応じて医療機関へ相談します。
6. 本人中心のコミュニケーションと意思決定
本人の言葉や行動には背景があります
同じ質問を繰り返す、予定を何度も確認する、帰宅したいと言い続けるなどの行動があると、周囲は「困った行動」と感じることがあります。しかし、本人には不安、分からなさ、疲れ、痛み、聞こえにくさ、環境への戸惑いなどの理由があるかもしれません。行動を止めることだけを目標にせず、「なぜそうしているのか」を考えます。
「否定しない」は、何でも事実として肯定することではありません
本人が事実と異なることを話した場合に、毎回強く訂正して言い争うと、不安や混乱が強くなることがあります。まず本人が感じている不安や気持ちを受け止め、そのうえで必要な情報を分かりやすく伝えたり、安心できる別の行動へつなげたりします。
一方、安全に関わる場面で事実と違う内容をそのまま放置する必要はありません。たとえば本人が「薬はもう飲んだ」と言っていても服薬状況が不明な場合は、言い争うのではなく記録や家族・支援者に確認するなど、安全な方法で対応します。
同じ質問を繰り返す場合
「さっきも言いました」と責めるのではなく、本人が何を確認したいのか考えます。予定が分からず不安なら、口頭で何度も説明するだけでなく、カレンダー、ホワイトボード、メモ、スマートフォンの通知など本人が使いやすい方法を一緒に考えます。
一度にたくさん説明しない
長い説明を一度にすると理解しにくい場合があります。短い文で一つずつ伝える、具体的に示す、選択肢を二つ程度にする、返事を急かさず待つなどの工夫ができます。ただし、本人を子どものように扱ったり、必要以上に大声で話したりすることは避けます。
できることを奪わない
時間がかかるからといって周囲が全部代わりに行うと、本人が持っている能力や役割を使う機会が減ります。「一人ですべてできるか」ではなく、「どこまでならできるか」「少し手伝えばできるか」を考えます。
本人の意思を確認する
認知症があっても、本人が意思を持てなくなるわけではありません。活動を選ぶときも、「今日は計算と音楽のどちらがいいですか」「少し休みますか」など、本人が選べるようにします。本人の答えがすぐに出ない場合には、考える時間を取り、分かりやすい情報を示します。
意思の尊重と安全の両方を考える
本人の意思を尊重することは、危険があってもすべて本人の希望どおりにするという意味ではありません。本人がしたいことを確認したうえで、危険を減らす方法や必要な支援を一緒に考えます。「危ないから禁止」と一方的に決める前に、「どうすれば続けられるか」を考える姿勢が大切です。
具体例
料理が好きな人が一人で調理することに不安が出てきた場合、すぐに料理をすべて禁止するのではなく、火を使わない作業を担当する、家族と一緒に行う、食器を並べるなど、本人が役割を続けられる方法を考えます。
復習問題 1
Q1. 同じ質問を何度もする本人への対応として適切なのはどれですか。
- 「何回言えば分かるのですか」と注意する
- 質問の背景に不安がないか考え、必要に応じて予定表などを一緒に確認する
- 質問には一切答えない
- 周囲の人の前で記憶力低下を指摘する
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正解:2 行動だけでなく、その背景にある不安や分かりにくさを考えます。
復習問題 2
Q2. 「本人の意思を尊重する」という説明として正しいものはどれですか。
- 本人に危険があっても何も説明せず希望どおりにすること
- 認知症があれば本人へ確認せず家族だけで決めること
- 本人の希望を聞き、必要な支援や安全策を考えながらできる方法を探すこと
- 本人が答えるまで何度も同じ質問を繰り返すこと
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正解:3 本人の希望と安全の両方を考え、支援しながら実現できる方法を探します。
復習問題 3
Q3. 本人が事実と異なる話をしたときの基本的な考え方として適切なのはどれですか。
- 必ずその場で間違いを証明する
- 何でも事実として同意しなければならない
- まず気持ちや不安を理解し、必要な場合は安全に配慮しながら分かりやすく確認する
- 本人の話はすべて無視する
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正解:3 「否定しない」は何でも肯定するという意味ではありません。感情を受け止めつつ、必要な確認や安全確保を行います。
7. 家族・周囲の支援と生活上の変化への対応
本人だけでなく家族も支援の対象です
認知症やMCIについて心配があると、家族は「自分がすべてやらなければならない」と負担を抱え込むことがあります。長期間の負担が続けば、睡眠不足、仕事への影響、心身の疲れ、本人との関係悪化につながることもあります。家族が休むことや支援を使うことは、本人を見捨てることではありません。
家族を責めない
家族に対して「もっと脳トレをさせるべき」「家族の対応が悪いから症状が出る」と決めつけてはいけません。家族にも生活や仕事があり、支援できる範囲は異なります。困りごとを聞き、地域の相談窓口やサービスにつなぐ視点を持ちます。
認知症に伴う行動・心理面の変化
認知症では、不安、意欲低下、怒りっぽさ、幻視、ものを盗られたと感じることなど、行動や心理面の変化が見られる場合があります。これらは認知機能の変化だけでなく、痛み、便秘、睡眠不足、薬の影響、周囲の騒音、人との関わり方、本人が理解しにくい環境など、身体や環境の影響を受けることがあります。
そのため、行動だけを「問題行動」として止めようとするのではなく、本人が何に困っているのか、体調はどうか、環境に変化はないかを考えます。
ものを盗られたと言う場合
「誰も盗っていない」と強く否定して言い争うだけでは不安が強くなることがあります。まず「見つからなくて困っていますね」と気持ちを受け止め、一緒に探す、普段置く場所を決めるなどの工夫を考えます。ただし、実際の金銭トラブルや虐待・詐欺の可能性がある場合まで、すべて「認知症の思い込み」と決めつけてはいけません。
家族だけで対応し続けない
介護や生活支援が必要になった場合には、地域包括支援センター、介護保険サービス、医療機関など地域の支援を利用できます。家族が限界になるまで待つ必要はありません。本人と家族の両方が生活を続けやすくすることを目指します。
本人や家族から知った情報の扱い
本人のもの忘れ、病名、家族関係などは個人に関わる情報です。必要もないのに周囲へ話したり、「○○さんは認知症らしい」と噂を広めたりしてはいけません。本人の安全や支援のために関係者との共有が必要な場合には、本人や家族の意向、緊急性、所属先のルールなどを踏まえて必要な範囲で対応します。
高齢者虐待や重大な危険が疑われる場合
本人への暴力、介護放棄、金銭的な搾取など重大な問題が疑われる場合は、自分や家族だけで解決しようとせず、地域包括支援センター、市区町村など適切な機関へ相談します。緊急の危険がある場合は安全確保を優先します。
復習問題 1
Q1. 家族が「自分一人で全部やらなければ」と疲れ切っています。考え方として適切なのはどれですか。
- 家族なので最後まで一人で対応するよう勧める
- 家族の努力不足だと指摘する
- 家族自身の休息も大切であり、地域の相談やサービス利用を検討する
- 脳トレを増やせば家族の負担は必ずなくなると説明する
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正解:3 家族も支援の対象です。負担を一人に集中させないことが大切です。
復習問題 2
Q2. 認知症の人の行動について正しい考え方はどれですか。
- すべて認知症そのものだけが原因である
- 身体状態や周囲の環境が影響している場合もある
- 本人の性格が悪くなっただけと考える
- どのような行動も本人へ理由を聞く必要はない
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正解:2 身体的な不調、環境、コミュニケーションなど複数の要因が関係する場合があります。
復習問題 3
Q3. 身近な人から知った認知症に関する情報の扱いとして適切なのはどれですか。
- 周囲にも知ってもらうため自由に話す
- 本人の情報なので必要なく周囲へ広めない
- SNSに匿名なら詳しく書いてよい
- 家族関係も含めて知人全員で共有する
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正解:2 本人の健康や生活に関する情報は、必要なく周囲へ広めません。
8. 地域資源・相談先・社会参加
相談先を知っておくことが大切です
本人や家族が困っているとき、自分たちだけで医療・介護・福祉の問題をすべて解決する必要はありません。どのような相談先があるかを知り、必要に応じて地域の専門機関へ相談することが重要です。
地域包括支援センター
地域包括支援センターは、高齢者の保健・医療・介護・福祉などに関する総合相談窓口です。認知症の不安、介護、生活上の困りごと、家族の負担などについて相談できます。どこへ相談すればよいか分からない場合の身近な入口の一つです。
かかりつけ医・もの忘れ外来
もの忘れや認知機能の変化について医療的な確認が必要な場合は、かかりつけ医やもの忘れ外来などへ相談します。かかりつけ医から必要に応じて専門医療機関へ紹介されることもあります。
認知症疾患医療センター
認知症疾患医療センターは、認知症の鑑別診断、専門医療相談、行動・心理症状や身体合併症への対応、地域の医療・介護機関との連携などを担う専門的な医療機関です。
認知症初期集中支援チーム
認知症が疑われる人や認知症の人、その家族に対し、医療・介護の専門職が訪問し、必要な医療や介護の導入・調整、家族支援などを包括的・集中的に行う仕組みです。利用方法は地域によって異なるため、地域包括支援センターなどへ相談します。
認知症カフェ
認知症カフェは、認知症の本人、家族、地域住民、専門職などが集まり、交流や情報交換を行う場です。地域によって名称、開催方法、参加対象などが異なります。
認知症ケアパス
認知症ケアパスは、認知症の状態に応じて、地域でどのような医療・介護・生活支援を利用できるか、その流れや相談先を分かりやすく示したものです。市区町村が地域の実情に合わせて作成しているため、自分の地域のケアパスを確認しておくと相談時に役立ちます。
本人ミーティングや家族会
認知症の本人同士が自分の経験や希望を語り合う本人ミーティングや、家族同士が悩みや情報を共有する家族会などがあります。支援を受けるだけでなく、本人自身が声を発信し地域づくりへ参加することも、新しい認知症観の重要な考え方です。
若年性認知症
65歳未満で発症した認知症を若年性認知症といいます。働いている世代で発症することもあり、仕事、収入、子育て、家族関係など高齢期とは異なる課題が生じる場合があります。各都道府県には若年性認知症の相談窓口や若年性認知症支援コーディネーターが配置され、就労継続や福祉サービス、居場所づくりなどを含めた支援を行っています。
認知症サポーターと脳活トレーナーは別のもの
認知症サポーターは、認知症について正しく理解し、本人や家族を温かく見守る応援者です。KLCオンライン検定の脳活トレーナー認定試験とは別の制度です。脳活トレーナーの資格を取得しても、自動的に認知症サポーターになるわけではなく、反対に認知症サポーター養成講座を受けてもKLCオンライン検定の脳活トレーナーに認定されるわけではありません。
社会参加は本人の希望を起点にする
地域活動、仕事、ボランティア、趣味、教室、友人との交流など、社会とつながる方法はさまざまです。認知症になったことを理由に一律に活動から外すのではなく、本人が続けたい活動や役割を確認し、必要な支援があれば参加できる方法を考えます。
復習問題 1
Q1. 「どこに相談したらよいか分からない」という高齢者や家族の身近な相談先として考えられるのはどれですか。
- 地域包括支援センター
- 自分で診断まで行う
- 相談せず様子を見ることだけを勧める
- 周囲の人へ相談内容を公開する
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正解:1 地域包括支援センターは高齢者の暮らしに関する総合相談窓口です。
復習問題 2
Q2. 認知症ケアパスの説明として正しいものはどれですか。
- 認知症かどうかを判定する検査である
- 地域で利用できる医療・介護・生活支援や相談先の流れを示したものである
- 認知症の治療薬の一覧である
- 全国どの市区町村でも内容が完全に同じである
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正解:2 地域の実情に合わせて市区町村が作成するため、地域によって内容は異なります。
復習問題 3
Q3. 若年性認知症について正しいものはどれですか。
- 65歳未満では認知症は発症しない
- 65歳未満で発症した認知症を若年性認知症と呼ぶ
- 高齢者とまったく同じ支援だけを考えればよい
- 仕事や家計への影響を考える必要はない
答えを見る
正解:2 若年性認知症では就労や家計など、その年代特有の課題も考える必要があります。
脳活を生活に取り入れるときのチェック
自分自身で脳活を行う場合も、家族や身近な人と一緒に行う場合も、同じ方法をすべての人へ当てはめる必要はありません。次の点を確認しながら、無理なく続けられる方法を考えましょう。
目的
「必ず認知症を防ぐ」など、効果を誇張して考えていないか。
興味
自分や相手が楽しめる活動か。嫌がることを無理に続けていないか。
難易度
難しすぎたり簡単すぎたりしていないか。必要なら方法を変えられるか。
身体の安全
体調、持病、転倒の危険などを考えているか。
続けやすさ
特別な教材だけに頼らず、生活の中で無理なく続けられる活動か。
尊厳
間違いや点数を使って自分や相手の能力を決めつけていないか。
情報
「この食品で予防できる」など、根拠以上に効果を断定していないか。
相談
認知症や体調について専門的な判断が必要な場合に、適切な相談先を利用できるか。
試験で問われる考え方
本試験では、単純な用語暗記だけではなく、自分自身の生活、家族や身近な人との関わり、仕事や地域活動などで起こり得る場面を想定した問題も出題します。認知症や脳活について極端な判断をせず、本人の尊厳、意思、安全、医学的な役割分担、現在分かっている知見の範囲を整理して考えます。
- 一般的な脳活課題の結果だけで認知症やMCIを判断しない
- 認知症になっても本人にはできること・やりたいことがある
- 「予防」は認知症を絶対に防ぐという意味ではない
- 一つの食品、サプリメント、脳トレだけを万能視しない
- 興味や体調に合った脳活を無理なく取り入れる
- 身体活動を伴う場合は安全を優先する
- 間違いや点数によって人の能力を決めつけない
- 「否定しない」と「何でも事実として肯定する」を混同しない
- 本人の意思を尊重しながら必要な安全策も考える
- 本人と家族を孤立させず、必要な地域資源や医療へつなぐ
注意事項
脳活トレーナー認定試験は、株式会社KIDAIが運営するKLCオンライン検定の民間認定試験です。国家資格・公的資格ではなく、医師、看護師、作業療法士、理学療法士、公認心理師、介護福祉士などの医療・介護専門職資格を付与するものではありません。
本試験に合格しても、認知症・MCIの診断、医療行為、薬の指示、医学的な認知機能評価を行う資格が得られるわけではありません。自分自身や家族・身近な人について認知症やMCIが気になる場合は、かかりつけ医、もの忘れ外来、地域包括支援センターなど適切な相談先を利用してください。
また、本学習ページで紹介する食事、運動、認知的活動、社会参加などは、認知症を必ず予防したり治療したりすることを保証するものではありません。健康状態や生活状況に合わせ、安全に無理なく取り入れることが大切です。
参考資料
本学習ページは、2026年8月時点で公開されている厚生労働省、国立長寿医療研究センター、世界保健機関(WHO)などの資料を確認し、一般の方が日常生活や家族・身近な人との関わりに役立てられる範囲に整理しています。医学的な診断・治療方法ではなく、認知症への正しい理解、リスク低減、安全な活動、本人中心の関わりを学ぶための資料です。
最終更新:2026年8月9日
学習が終わったら、理解度を確認しましょう
脳活トレーナー認定試験では、認知症やMCIの知識だけでなく、食事・運動・社会参加など脳の健康を支える生活、脳活の取り入れ方、安全への配慮、本人中心の関わり方、地域の相談先を利用する考え方などを確認します。このページの内容を一通り確認してから受験してください。
